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働きながら年金は減る?在職老齢年金65万円への改正|2026年8月版

老後資金の基礎知識公開:2026年8月29日最終更新:2026年8月29日文:保

本記事は情報提供を目的とした解説で、特定の働き方や受給のしかたをすすめるものではありません。年金の取り扱いは生年月日・加入歴・共済組合に入っていたかどうかで変わります。記載の数値は2026年8月の時点で日本年金機構および厚生労働省が公表しているものです。ご自身の支給停止額は、必ずねんきんネットまたはお近くの年金事務所でご確認ください。

働きながら受け取る老齢厚生年金が減りはじめる基準額が、令和8年4月から月51万円ではなく65万円になりました。上げ幅は14万円。日本年金機構があげている例だと、賃金46万円で年金10万円の人は、これまで月2.5万円が止まっていたのに、これからは10万円がまるごと出ます。とはいえ「51万円」で覚えたままの人はまだ多いはず。しかも判定に使うのは月給そのものではありませんし、70歳をすぎた人や雇用保険の給付を受けている人には別のあつかいもあります。何がどう変わったのかを押さえたうえで、自分の停止額を出すところまで順に見ていきます。

在職老齢年金は何が変わった?

在職老齢年金は、厚生年金保険に入りながら老齢厚生年金を受ける60歳以上の人について、賃金と年金の合計に応じて年金の全部または一部を止めるしくみです。その「止まりはじめる線」が動きました。

もとになったのは令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)。日本年金機構は、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられたと案内しています。見直しのねらいとして機構があげているのは、平均寿命・健康寿命がのびるなかで働きつづけたい高齢者を後押しし、より働きやすいしくみにするという点でした。

在職老齢年金の改正前後(日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」更新日2026年4月1日より作成)
項目令和8年3月以前令和8年4月以降
基準額(支給停止調整額)51万円(令和7年度)65万円(令和8年度)
調整後の年金支給月額基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2
合計が基準額以下のとき全額支給
対象になる人厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける60歳以上の方
調整される年金老齢厚生年金のみ(老齢基礎年金は調整の対象外)
基準額の見直し毎年度、賃金の変動に応じて改定

いちばん下の行を見落とさないでください。65万円はあくまで令和8年度の基準額で、来年度も65万円だという保証はどこにもありません。毎年度、賃金の変動に応じて改定されると機構がはっきり書いています。ついでにいうと、令和8年度は国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げ。老齢基礎年金の満額は月70,608円(昭和31年4月2日以後生まれ)で、令和7年度の69,308円から上がりました。令和8年4月分が届くのは、6月15日(月曜)の支払分からになります。

判定に使う2つの金額はどう出す?

判定に使うのは月給ではありません。基本月額と総報酬月額相当額という2つの金額を足して、65万円とくらべます。合計が65万円以下ならまるごと出ます。ここを月給だけで見てしまうと、答えがずれてしまうわけです。

基本月額

加給年金額をのぞいた老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を、12で割った額です。共済組合等からの老齢厚生年金も受け取っているなら、日本年金機構と共済組合等からのすべての老齢厚生年金を合わせた年金額を12で割ります。老齢基礎年金は、ここに入れません。

総報酬月額相当額

その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものです。つまり賞与が乗ってきます。年2回で合わせて240万円のボーナスをもらっている人なら、240万円÷12で月20万円が上のせされる計算。標準報酬月額が45万円あれば、それだけで総報酬月額相当額は65万円にとどきます。

この2つのことばは、年金用語集にも説明があります。標準報酬月額は、報酬月額を1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分けたもの。標準賞与額はその月に支払われた賞与額の1,000円未満を切り捨てた額で、上限は150万円と書かれていました。

賞与の重みに気をつけたい。月給が同じでも、ボーナスの多い人ほど総報酬月額相当額はふくらみます。日本年金機構が改正のページであげている例も、標準報酬月額36万円に標準賞与額120万円(月額10万円)を足して総報酬月額相当額46万円という組み立てでした。年俸制でボーナスのない人と、月給をおさえて賞与に寄せている人とでは、同じ年収でも判定の結果が変わってきます。

51万円のときといくら違う?

止まるのは、基準額をこえた金額の半分だけです。基本月額が10万円の人なら、年金がまるごと出る賃金の上限が大きく動きました。日本年金機構の早見表には、こう書いてあります。

例えば、基本月額が10万円の人の場合、年金が全額支給となる総報酬月額相当額は、41万円から55万円へ引き上げられることになります。
日本年金機構「在職老齢年金早見表」
基本月額10万円の人の支給停止額(月額)。51万円基準の列は日本年金機構「在職老齢年金早見表」の値、65万円基準の列は同機構の計算式に当てはめた当ブログの計算。
総報酬月額相当額51万円基準65万円基準軽くなる額
41万円0円0円0円
46万円2.5万円0円2.5万円
51万円5万円0円5万円
56万円7.5万円0.5万円7万円
61万円10万円3万円7万円

右はしの列は7万円で止まります。基準額が14万円あがって、こえた分の半額が止まるしくみですから、軽くなる額の上限は14万円÷2の月7万円、年に直すと84万円です。ただしこれは上限であって、みんなが7万円ぶん軽くなるわけではありません。7万円まるごと動くのは、改正の前もあとも「こえた分の半額」で計算がおさまっている人だけ。基本月額10万円なら、総報酬月額相当額が55万円から61万円のあいだになります。

範囲ができるのは、支給停止額が基本月額で頭打ちになるからです。年金支給月額がマイナスになるときは老齢厚生年金が全額支給停止になると機構が案内しているとおり、基本月額10万円の人から止められるのは月10万円まで。ですから賃金が高いほど恩恵も大きい、とは限りません。基本月額10万円で総報酬月額相当額が75万円の人だと、51万円基準でも65万円基準でも老齢厚生年金は全額止まり、改正による差はゼロでした。なお早見表は計算式の値をそのまま印字しているので、基本月額5万円の欄に停止額10万円と出ている箇所があります。そのまま「10万円止められる」と読まないほうがよさそうです。

いっぽうで、合計が51万円と65万円のあいだにおさまる人は、止まっていた分がまるごと消えました。上の表なら総報酬月額相当額が46万円と51万円の行がそれにあたり、月2.5万円と5万円の停止がゼロになっています。今回いちばん得をしたのは、この帯にいる人たちでしょう。

65万円を超えたら働き損になる?

なりません。こえた分の半額だけが止まる設計なので、賃金がふえれば年金と賃金の合計もふえます。厚生労働省のチラシにも、この点がはっきり書いてありました。

65万円を超えても、実際に支給される年金額と賃金の合計額はなだらかに増加する仕組みであり、手取り収入が減少することはありません。
厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」2026年1月版

同じチラシは、調整の対象になるのは老齢厚生年金だけであること、計算は月額の単位で行われること、そして調整されるのは年金であって給与には影響しないことを並べて説明しています。減るのは年金のほうで、働いた分の賃金がけずられるわけではありません。

日本年金機構のリーフレットにのっている計算例で確かめてみましょう。老齢厚生年金額120万円(基本月額10万円)の人が、標準報酬月額47万円・標準賞与額132万円(月額11万円)で総報酬月額相当額58万円だったケース。合計は68万円で65万円をこえるので、支給停止額は(58万円+10万円-65万円)×1/2×12で年18万円、月に直すと1.5万円になります。年金の支給額は120万円-18万円=102万円、つまり月8.5万円でした。

この人は老齢基礎年金を月7万円受けており、賃金58万円と合わせた収入は月73.5万円。同じ条件を改正前の51万円で計算すると停止額は月8.5万円ですから、差は月7万円。さきほど頭打ちになっていた金額とぴったり重なります。

年金が止まっても厚生年金保険料は納める

年金が止まったからといって、厚生年金保険料まで止まるわけではありません。むしろ70歳未満なら加入は義務です。日本年金機構のリーフレットにも、厚生年金保険の適用事業所に勤務している70歳未満の人は年金を受けていても厚生年金保険に加入しなければならない、と書かれていました。ただし一定の要件に満たない短時間労働者などは加入の対象から除かれます。

では70歳をすぎたらどうなるか。平成19年4月以降に70歳に達した人が70歳以降も厚生年金の適用事業所に勤務しているなら、厚生年金保険の被保険者ではないものの、在職による支給停止は行われます。ただ被保険者ではないので、保険料の負担はありません。年金は止まるのに保険料は止まらない、という状態は69歳までの話だと整理しておくと、頭に入りやすいはずです。

もうひとつ。計算の結果として年金支給月額がマイナスになるときは、老齢厚生年金が加給年金額を含めて全額支給停止になります。それでも老齢基礎年金および経過的加算額はまるごと支給されます。2階部分が全部止まった人にも、1階部分は残る。ここは押さえておきたいところです。

高年齢雇用継続給付を受けていると別枠で止まる

60歳以上65歳未満で高年齢雇用継続給付を受けている人は、在職老齢年金とは別に、最高で標準報酬月額の4%にあたる年金が止まります。合計が65万円以下で在職老齢年金の停止がゼロの人にも、こちらは起きます。

高年齢雇用継続給付そのものは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者のうち、賃金額が60歳到達時の75%未満になった人が対象。最高で賃金額の10%にあたる額が雇用保険から支払われるものです。

リーフレットの例で見てみましょう。基本月額10万円の人が、60歳の時点で月35万円だった賃金を20万円に下げたケース。基本月額と総報酬月額相当額の合計は30万円で、65万円にはとどきませんから、在職老齢年金による支給停止はありません。それでも高年齢雇用継続給付を受けることで、標準報酬月額20万円×4%=0.8万円が止まります。給付金のほうは20万円×10%=2万円。賃金20万円と老齢厚生年金9.2万円と給付金2万円を足して、収入は月31.2万円になりました。

経過措置にもふれておきます。令和7年3月31日以前に60歳へ到達している人や再就職した人は、最高で賃金額の15%が給付され、年金の支給停止額は最高で標準報酬月額の6%です。生年月日で割合が変わるところなので、自分がどちらにあたるかはハローワークで確かめてください。

止まった年金はいつ戻る?

支給停止はずっと続くものではありません。日本年金機構が示している支給停止の期間は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円をこえているあいだだけ。停止額が変わるのは、総報酬月額相当額が変わった月、または退職日の翌月です。

年金額が見直される主なタイミング(日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」更新日2026年4月1日より作成)
できごと対象いつから見直されるか
在職定時改定厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受ける65歳以上70歳未満の方で、基準日の9月1日に被保険者であるとき翌月の10月分の年金額から
退職改定70歳未満の方が退職して1カ月を経過したとき退職した翌月分の年金額から
70歳到達厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受ける方が70歳になったとき70歳に到達した翌月分の年金額から

退職改定には落とし穴があります。退職して1カ月以内に再就職して厚生年金に入ったときは、年金額の再計算が行われません。転職の間隔が短いと、退職改定を待っていたつもりが動かないわけです。退職と再就職の日付は、意識しておいたほうがよさそう。

なお再計算の結果、厚生年金の加入期間が20年をこえたときは、加給年金が支給されたり、配偶者に振替加算が支給されたりすることがあります。そのときは別途、手続きが必要になると機構は案内していました。

自分のケースはどう確かめる?

電卓ひとつで、おおよその額は出せます。順番はこうです。

  1. 基本月額を出す。ねんきん定期便やねんきんネットで老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を確かめ、12で割ります。加給年金額は入れません。
  2. 総報酬月額相当額を出す。直近の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12を足します。給与明細か、勤め先の担当者に聞くのが確実です。
  3. 2つを足して65万円とくらべる。65万円以下ならまるごと出ます。こえていたら次へ。
  4. 停止額を計算する。(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2が、1か月あたりの停止額になります。
  5. ねんきんネットで試算する。ただし厚生労働省のチラシ2026年1月版には、65万円の基準額で試算が可能となるのは令和8年4月以降になるという注記がありました。この記事を書いている2026年8月はその4月をすでに過ぎています。試算の画面がどちらの基準額で計算しているかは、実際の表示でお確かめください。
  6. 年金事務所か街角の年金相談センターに相談する。共済組合等からも老齢厚生年金を受け取っている人は、停止額をそれぞれの年金額に応じて割りふる処理が入るため、自力のおおよその計算とはずれます。

私がこの改正でいちばん大きいと感じたのは、金額そのものより、考える順番が変わったことでした。これまでは51万円という線を意識して、勤務日数や役員報酬を先に調整するという話をよく見かけたものです。65万円になると、その調整がいる人の範囲はぐっとせまくなります。働き方を年金の線に合わせるのではなく、働き方を決めてから年金がどうなるかを確かめる。順番としては、そちらのほうが自然でしょう。

とはいえ年金は、生年月日と加入歴でこまかく分かれる制度です。ここに書いた数字は公表資料をもとにした一般的な整理でしかないので、ご自身の受給額と停止額は日本年金機構の窓口でお確かめください。

よくある質問(FAQ)

Q. 在職老齢年金の基準額はいつから65万円になりましたか?
令和8年4月からです。日本年金機構は、令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から年金が減額になる基準額が月51万円から65万円に引き上げられたと案内しています。65万円は令和8年度の基準額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
Q. 65万円を超えると年金はいくら止まりますか?
調整後の年金支給月額は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2」で計算されます。こえた額の半分が止まる形です。合計が65万円以下なら全額支給されます。
Q. 老齢基礎年金も支給停止の対象になりますか?
なりません。日本年金機構は、老齢基礎年金は調整の対象にならないと明記しています。年金支給月額がマイナスになるときは老齢厚生年金が加給年金額を含めて全額支給停止になりますが、その場合でも老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給されます。
Q. 70歳を過ぎて働いても支給停止されますか?
されます。平成19年4月以降に70歳に達した方が70歳以降も厚生年金の適用事業所に勤務している場合、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職による支給停止が行われます。ただし被保険者ではないため、厚生年金保険料の負担はありません。
Q. 退職したら止まっていた年金はいつ戻りますか?
70歳未満の方が退職して1カ月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されます。これを退職改定といいます。ただし退職して1カ月以内に再就職して厚生年金に加入したときは、年金額の再計算は行われません。
参考にした一次情報・公的データ

※「65万円基準」の停止額と軽くなる額の列は、日本年金機構が公表している計算式に当てはめた当ブログの計算です。税金・社会保険料は含んでいません。実際の支給停止額はねんきんネットまたは年金事務所でご確認ください。

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自分年金2000万、安定構築プラン 編集部

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